教員プレゼンバトル2013 第五回講義概要

◆生稲史彦先生 「開発生産性のディレンマ」
_DSC7208 [プレゼン発表] 生稲先生は経営学の専門家です。今回は、生稲先生が取り組んでこられた、ゲームソフト企業を対象とした研究についてプレゼン発表をされました。 生稲先生が学生だった頃は、ちょうどテレビゲームが盛んになり出した時代で、生稲先生も、多くの男子学生と同様、テレビゲームにすっかりはまっていたそうです。ゲームを始めた頃は、次々と販売される新作に深い感動を覚えていたそうですが、だんだんと新作に対する新規性や、魅力を感じなくなり、遂にはつまらないと思うようになったそうです。そのため、「なぜ本当に新しいものが開発されなくなったのだろうか?」という疑問を生稲先生は持ちました。そして、この素朴な疑問を経営学の視点で解き明かそう、と思ったのが研究の出発点だそうです。 研究に着手しはじめ頃は、経営学の分野で既に確立しているメジャーな考え方を、そのままゲームソフト企業に当てはめる、という研究スタイルだったそうです。「知識こそが価値の源泉である」という、経営学のメジャーな考え方によれば、開発ノウハウを蓄積していくことこそが、ゲームソフト企業が競争優位を生み出すためのマネジメント法であることが結論されます。 しかし、「本当にそうなのか?」、と生稲先生は思ったそうです。確かに、経営学のメジャーな考え方(cool heads)からすれば、開発ノウハウの蓄積は企業にとって良いマネジメント法かもしれない。しかし実際には、「ゲームがつまらなくなった」、という個人的で確かな感覚(warm hearts)がある。そこで、cool headsではなくwarm heartsを優先し、そもそも経営学のメジャーな考え方を疑ってみる、という方向で研究を仕切り直したそうです。 そして新たに、「イノベーション」という視点で研究を見つめ直し、公刊資料や企業から得られたデータの収集など、地道な実証研究を展開され、遂にたどり着いたのが、「開発生産性のディレンマ」という考え方です。 「開発生産性のディレンマ」とは、開発ノウハウの蓄積を進めていくと、開発活動の効率化と同時に、類似性を優先する戦略に偏重してしまい、「新しいなにか」を創りだすことができなくなってしまう現象だと、生稲先生は言います。企業における開発ノウハウの蓄積なくしては、企業たり得ないことは確かですが、皮肉なことに、その開発ノウハウの蓄積が将来の可能性を狭めてしまうことを、このディレンマは主張します。 十数年かけて構築した理論を、わずか15分のプレゼンで発表するという、(生稲先生曰く)「無理な」発表でしたが、研究内容に対する自信に満ちた一語一句や、力強い身振り手振りから、十数年の研究の重みが十分に伝わってきました。そして、「cool heads」や「warm hearts」など、こだわって選び抜かれたフレーズが、プレゼンの魅力を引き立てており、自身がおっしゃる通り、生稲先生のプレゼンは正に、「総合芸(術)」でした。   [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. 私は一人のゲームファンとして、最近の日本のゲームソフトに新しさを感じない。日本のゲームソフト業界が、世界を驚かせるような、新しいものを開発できる見込みはあるか。(生命環境科学研究科の大学院生) A. 私の理論に照らし合わせて言うと、新しいものが開発されるためには、企業間の競争ではなく、ゲームソフト業界への他の分野からの参入が必要だと思う。そのためには、ニューカマーを受け入れるような、業界のオープンネスが今後必要になると思う。     [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。    
◆北将樹先生 「哺乳類の持つ毒の科学」
_DSC7262 [プレゼン発表] 北先生は、有機化学が専門の先生です。生物の持つ毒を有機化学の視点で研究しています。 ハチ、サソリ、フグなどは毒を持つ生き物の代表格ですが、哺乳類にも毒を持つ生き物がいるそうです。それが北先生の研究対象である、トガリネズミの仲間とカモノハシです。 トガリネズミは、主に夜行性でミミズや昆虫を主食にしているかわいらしい動物です。しかし、愛くるしい姿形に似つかわしくなく、唾液に毒が含まれていることが報告されていました。 一言に毒と言っても、その正体は、低分子やタンパク質など様々で、より詳細を知るためには、化学物質として毒を単離し、分子構造を明らかにすることが必要になります。このことこそが、北先生が得意とする、有機化学の出番です。北先生は世界で初めて哺乳類の毒成分の構造を明らかにした、この分野の第一線の研究者です。 化学者の研究現場は、実験室だというイメージがありますが、北先生は実験室だけに留まらず、生態学者とタッグを組んでフィールドに出かけます。今回、日本とキューバの共同研究プロジェクトにより、「ソレノドン」という生態の分かっていない未知の生き物の捕獲と唾液の採取を目指し、キューバまで行かれました。ほとんどソレノドンに関する情報の無い中、遂にソレノドンの個体の捕獲と唾液の採集に成功し、大きな話題となりました。現在このプロジェクトは、得られた唾液から、毒の構造を解析中だそうです。 北先生は、タンパク質の話から、ソレノドンのかわいらしい行動の動画まで、緩急をつけたプレゼンで観客を魅了しました。また、ミクロな分子構造の化学の話から、動物行動、さらには化石や進化の話まで、様々なスケールの科学が毒というキーワードの下に凝集しており、非常に学際的な研究であることが印象に残りました。     [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. 北先生の研究は、医療関係に役立つのでは? A. 新規な毒の化学的な解明は、薬理学や、神経学などの基礎研究に寄与し、さらには、痛みに関する創薬にも繋がる。 Q. 毒を持っている動物が、自分の毒が効かないのはなぜか? A. タンパク毒は、自分自身の毒が血液中に入ってしまわないようになっている。逆に血液中に入ってしまえば死んでしまう。トガリネズミが共食いする際、相手の毒で死んでしまうこともある。     [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。    
◆手塚太郎先生  「疎性に基づく情報処理」
_DSC7294 [プレゼン発表] 手塚先生は図書館情報メディア系の先生です。あの有名な、「やってみよう研究所」の所長でもあります。今回は、コンピュータサイエンスの世界で話題となっている、「疎性に基づく情報処理」について発表されました。 コンピュータサイエンスの究極の目標は、コンピュータに人間と同じ思考をさせることだと手塚先生は言います。そのため、人間を含めた生物の情報処理の仕組みが解明されると、その仕組みがコンピュータサイエンスに応用されることが多いそうです。「物事を認識する」、という一見コンピュータにとって複雑で困難な課題も、生物がやっている方法から学びとることで、克服することができます。その一つの例が、生物の神経系における「疎性」と呼ばれる性質の、コンピュータの情報処理への応用です。 手塚先生はまず、生物が物事を認識する際の、神経系の仕組みを非常に明快に説明されました。我々生物の脳の中には、ネットワークで繋がった沢山の神経細胞が存在しています。ある一つの認識に対する情報処理過程には、これらのネットワーク中の“数多く”の神経細胞が関与していると想像できるでしょう。しかし実際には、“少数の”(疎らな)神経細胞だけが活動しているそうです。これが「疎性」と呼ばれる性質です。このように、神経系が「疎性」的な活動をするメリットは、蓄えられる情報量の増加や、省エネ等が考えられるそうです。 そしてこの「疎性」的な仕組みを、コンピュータの情報処理に応用することができます。 例として、コンピュータによる画像処理を紹介されました。コンピュータで扱うデジタル画像を、数学のベクトルで表現します。その際に、多くのベクトル成分がゼロとなるように情報を扱うことで、生物系でみられる「疎性」な情報処理が可能になります。このことが、膨大なデータを処理する際に、計算コストを下げることが可能になるそうです。 手塚先生は、テンポよくリズミカルな発表をされ、話の流れが非常に明快でした。また、誰よりも楽しそうに発表されるため、研究のおもしろさが存分に伝わってきました。     [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. 手塚先生は、「人間の脳とコンピュータは同じである」というが、同じリンゴであっても、鮮度の違いなど、それぞれの質感みたいなものがあるので、こういった感覚はコンピュータでは捉えられないと思う。つまり、人間の脳をコンピュータで再現することは難しいのでは。(教育学専攻の大学院生) A. それは単に、コンピュータが質感を学習できていないからである。学習させることができれば、リンゴの鮮度も判断できると思う。赤ちゃんも生まれていきなり「おばあちゃん」を認識するわけではない。 Q. しかし、人間の脳には個人差みたいなものもあるので、これらはコンピュータで捉えられないのでは。(教育学専攻の大学院生) A. 最近インターネット上で学習する人工知能が開発されている。この方法なら、非常に多くのことを学習可能であるので、コンピュータが質感や、個人差みたいなものも理解する日が来るかもしれない。   人間の脳VSコンピュータ、というとても刺激的な討論になりました。 この議論に関する手塚先生の立場がhttp://yattemiyou.net/archive/machines.htmlに代弁されていると思いますのでこちらもご覧下さい。     [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。   (文責:尾澤岬)

教員プレゼンバトル2013 第四回講義概要

◆中園長新先生 『 「いま」を生きるための情報教育 』
_DSC6639 [プレゼン発表] 中園先生は、教育学域で「情報教育」に関する研究をしている先生です。正確には教員という立場ではありませんが、TGN独自の学内調査で、非常にアクティブな方であるという情報を受け、この度プレゼンターをお願いしました。 情報教育と聞くと、中高生時代に受けたエクセルやパワーポイントなどの実習を思い出す人が多いと思います。しかしながら、パソコン操作の実習が情報教育の現場で主要なテーマとなっているのは、現代だからに過ぎない、と中園先生は言います。パソコンの全く無かった戦国時代であれば、のろしの回数を数えることが情報教育の重要な役目かもしれません。このように、パソコン・ケータイなどの機器の使い方や、現代という時代を離れて存在する、情報教育の本質について中園先生は模索されています。 では一体、情報教育の本質とは何でしょうか?それは、コミュニケーションに行きつくのではないか、と中園先生は考えているそうです。このことを、次の巧みな例えで説明されました。 カップ麺の作り方を初心者に教えたいとします。すると多くの人が、1. お湯を沸かす、2. フタを開ける、3. お湯を注ぐ、4. ・・・。というように作り方を伝えると思います。しかしながら実際には、フタを開ける前にビニールをはがすことが必要です。また、ラーメン系または焼きそば系であるかによって、ソースを入れる順番が重要になってきます。この例から分かるように、現実にやり取りされる情報には多くの「行間」が存在します。情報過多と言われる現代ですが、生きていくためにはこの行間を読み取る能力が必要とされます。そして、この能力を鍛えることが情報教育の重要な役目ではないかと提案されました。 中園先生は、今年度のプレゼンターの方々の中では抜群に若く、エネルギッシュな発表をされました。特にカップ麺の件では、会場にカップ麺を持参し、ビニールを破るアクションをされたことが、非常に印象に残りました。情報がデジタルに伝えられることが多い中で、実世界に実物を導入して伝えることに、大いにリアリティを感じました。仮想世界の台頭で見失われがちな情報教育の本質を、ある種体現しているようなプレゼンでした。 また中園先生は、プレゼンの補足を先生自身のホームページに掲載してくださっているようです。こちらもご覧ください。http://zono.e4serv.net/weblog/ [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. なぜ現状では、高校などでの情報教育は、パワーポイントやエクセルの使い方を教えるといったパソコン教室化してしまっているのか。(畜産を専門に研究している大学院生) A. このようなありきたりの情報教育になってしまっている理由は二つある。一つは、教える側の専門性にある。情報教育について専門的な指導ができる高校教員は少ない。もう一つは、実社会で即戦力となる人材を育成することが要求されているため、実社会で役立つパソコンスキルの習得が早急に望まれているからだと思われる。 Q. とは言うものの、個人的には高校でのパソコン教育は非常に役に立っている。それを変える理由はあるか。(植物育種を専門とする大学院生) A. パソコンスキルだけでなく、情報化社会が持つ闇の部分も知る必要があると思う。例えば、なぜfacebookが無料であるか、といった知識も今後生きていく上で必要であると思う。 [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。
◆金久保利之先生 『 コンクリート構造物の地震被害とその対策 』
_DSC6704 [プレゼン発表] 金久保先生は、コンクリートの構造や強度に関する研究を専門にされています。近年の地震による建物の被害を受け、今後の地震に対する備えはますます重要になってきています。そんな中で、今注目されている金久保先生にプレゼンをお願いしました。 まず金久保先生は、東日本大震災で倒壊した建物の写真を紹介されました。メリハリの利いた文字だけのスライドで発表された中園先生とは対照的に、写真中心の構成で話を展開されました。完全に潰れてしまった日本家屋や、天井がごっそり落ちてしまった体育館が、地震に対する建物の脆弱性を物語っていました。東日本大震災では、原子力や津波による被害が大きく取り上げられていますが、ここ茨城県では、地震の揺れによる建物への直接的なダメージが主要な被害の形態だそうです。今後も油断できない大地震への備えとして、地震の揺れに耐えることのできる建物が望まれます。 ところで、そもそも建物が壊れるのはどうしてでしょうか。金久保先生は、原点に立ち返った疑問を聴衆に投げかけました。率直に考えると、「建物の強度を地震の強さが上回ったから」、と結論したくなります。実は、「重力」の影響が大きいそうです。このことを、円柱とおもりでできた模式図を用いて説明されました。地面に立てた細長い円柱の先に、おもりをバランスよく乗せます。いざ地震が来て横揺れが起こると、円柱はたわみます。するとおもりに働く重力を支えきれなり、倒壊します。重力が建物に与える影響は、非常に複雑なメカニズムのようですが、単純化された模式図を導入したことで、大づかみに理解することができました。 プレゼンの最後に、金久保先生の実際の研究タイトル「鉄筋コンクリート構造の耐荷性状と変形性能」を宣言されて発表は終わりました。つまり、金久保先生は、自身の研究内容には触れず、発表の15分を全てイントロに割り当てました。金久保先生曰く、「発表タイトルが理解してもらえれば充分」、とのことです。このプレゼン構成には驚きましたが、質疑応答の際に受講生から踏み込んだ質問が数多く出ました。つまり、「掴み」は大成功だったようです。異分野向けのプレゼンの場で、聴衆とのインタラクションを活発にするには、今回の金久保先生のようなスタイルが有効ではないでしょうか。 [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. 今回の地震で、実家の建物が倒壊してしまった。原因は地盤沈下だったようだ。もうこのような経験はしたくないので、将来土地を買う時の指針のようなものを教えてほしい。(システム情報工学研究科の大学院生) 過去に川・沼・池であった土地は液状化現象が起きやすい。地名に川や池が付く場所は昔そうであった場合が多い。より詳しく調べたい場合は、国土地理院に行って昔の地図を調べればよい。 [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。
◆三谷純先生 『 コンピュータが拓く新時代の折り紙設計 』
_DSC6749 [プレゼン発表] 三谷先生は、コンピュータグラフィックスが専門の先生です。今回の発表では、コンピュータによる折り紙の設計についてプレゼンして頂きました。私たち日本人にとってなじみ深い折り紙ですが、その歴史は古く、1797年には折り鶴の様々なバリエーションをまとめた文献が刊行されているそうです。このような伝統ある折り紙と、コンピュータの接点はどこにあるのでしょうか。 折り鶴を、もう一度平坦な紙に展開してみましょう。すると、山・谷の折れ線によってできた複雑な幾何学模様が見えます。そして再度、山・谷の線に従って折り込むと、さきほどと全く同じ折り鶴が再現できます。つまり、折り鶴と山・谷の折れ線の幾何学的パターンは一対一に対応します。そして、このような幾何学的なパターンの処理はコンピュータが得意とするところです。ここが折り紙とコンピュータの接点のようです。誰もが驚くような、複雑で美しい構造を折るのは、折り紙の熟練者でないとなかなか折れません。そこで三谷先生は、誰でも簡単に複雑で美しい立体的構造を折ることができる折り紙ソフトウェアを開発しました。プレゼン発表では、ソフトウェアの実演と、完成した実物を披露されました。このようなコンピュータを駆使した折り紙設計では、一見難しい曲面的な構造さえ折ることができるそうです。 以上の折り紙研究の反響は大きく、ファッションショーで使用されたり、数学の教科書の表紙にも採用されたそうです。また、「ものをコンパクトに畳む」という応用性が人工衛星のソーラーパネルをはじめ、多くの分野で注目されているそうです。 三谷先生は、研究内容もさることながら、流れるような口調から圧巻のプレゼンを披露されました。プレゼンスライドは、「最初と最後が一番見られる」という考えから、最初のスライドにtwitterのアカウント「@jmitani」を表示されていました。今回のプレゼンバトルを機にフォロワーを30人くらい増やしたいとのことです。みなさんもフォローしてみてはどうでしょうか。 [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. 折り紙の世界では、紙を切るのは御法度か?(構造エネルギー専攻の教員) A. 折り紙の定義はいろいろあって、研究者によってまちまちだが、私は切らない流儀で研究している。しかし一方で、紙のかたちは自由に選んでいる。 Q. そのように折り紙の定義が様々だと、定義によって性質に違いが表れそうだ。(構造エネルギー専攻の教員) A. その通りだ。例えば、切り目を入れる/入れないの流儀の違いで、応用性が変わってくる。防塵カバーの折り方をデザインしたい場合、切り目を入れない流儀でデザインしないといけない。 [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。

プレゼンひろば

夕方のプレゼンが隔週ではありますが、レギュラー化いたします。 企画名は「プレゼンひろば」です。 研究プレゼンを通して異分野の人々が交流できる場を目指していきます。 レギュラー化、1発目は今週末です。 是非、お越しください。

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教員プレゼンバトル2013 第三回講義概要

◆津田和彦先生 「テキストマイニングとその応用」
[プレゼン発表] _DSC6482 津田先生は、東京キャンパスにあるビジネスサイエンス系の先生です。今回は、教員プレゼンバトルに参加するために筑波キャンパスまでお越しいただきました。筑波キャンパスで学ぶ私たちにとって、今まで東京キャンパスとはあまり接点がなかったと思います。今後TGNでは、東京キャンパスも積極的に巻き込んで筑波大学全体を学術的に盛り上げていきたいと思っています。さて、プレゼン内容に話を戻します。津田先生は、日本語や英語などのいわゆる自然言語(コンピュータ言語と比較してこのように呼ぶ)で書かれた文章の中から、内容を計算機を用いて抽出する研究を行っています。人間でない計算機からすると、ネット上の文章やメールは無機質な文字の羅列にあたるため、そこから内容を引き出すなんて信じられません。しかしそれを可能にするのが、膨大なデータの中から規則性を掘りだす、データマイニングという計算機科学の手法です。データマイニングの手法では、様々な形でやりとりされる文書を主語と述語に分解し、高度な計算を駆使して文章内容をくみ取ります。特に、文末の述語に注目すると、その文章が肯定的な内容なのか、あるいは否定的な内容であるのか大体判定できるそうです。ところで、ネット上の文章やメールのやりとりには顔文字がよく使われます。携帯メールで活用している方も多いのではないでしょうか。意外にもこの顔文字が、文章の内容を読み取るのに結構役に立つそうです。例えば文末に、(;`´)oという顔文字があったとします。この時、顔文字の中の“`´”に注目することで、怒りを表す内容であることを引き出すことができるそうです。こうした研究技術は、試験的に宿泊サイトの批評の解析などにも応用されているようです。ネット上でやりとりされる文章がますます増えている昨今、津田先生の研究は今後大きな応用の可能性を秘めていると感じました。津田先生のプレゼンは、常に聴衆を見ながら語りかけ、私たちと呼吸を合わせながら発表するスタイルでした。何十人もの受講生を相手にしているにも関わらず、あたかも一対一で話を聞いているかのような錯覚を覚え、プレゼンに自然と引き込まれていきました。「聴衆とリズムを合わせる」という感覚が、プレゼンを生き生きと魅力的なものにするということを認識しました。   [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. 「部屋は広いけど料理はちょっと。。。」というように、日本語には真意を明らかにせずに、相手に空気を読ませるような文章表現がある。このような表現から内容をくみ取るようなことは可能だろうか。(文学を専攻する大学院生) A. 「。。。」(3点リーダー)という文章表現の場合、 直前の単語でほとんど意味が決定されている。今の例だと、直前の「ちょっと」が文章全体を否定的な意味に導いている。このような3点リーダーに関しては、90%くらいの正答率で文意を特定できる。 Q. それでは、他にも嫌味や皮肉を文章からくみ取ることは可能か。 A. これらはなかなか難しい。しかし、顔文字の解析が役に立つ場合が多い。   [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。    
◆遠藤靖典先生 「クラスタリングによる知識発見」
[プレゼン発表] _DSC6503 遠藤先生が専門とするクラスタリングとは、人間の手には負えないような沢山のデータを、類似なもの同士に分類する計算機科学の手法のことです。みなさんお気づきだと思いますが、遠藤先生とひとつ前の発表者の津田先生の研究分野は非常に近いと思います。現在、データマイニングやクラスタリングは、ビジネス、シス情と研究科を越えて活発に研究されており、今後大注目の研究分野のようです。さて、私たちが普段何か物事を分類するときには、分類するための指針のようなものを使っていると思います。(例えば、タコとイカを分類するのは“足の数”でしょうか?)このような指針のことを計算機科学の分野では、「教師」と呼ぶそうです。しかし、いつでも適切な教師が存在するとは限りません。また、無理に教師を設定しようとすると、誤った分類を導きかねません。そこで、遠藤先生は、「教師なし」で分類を可能にするクラスタリング手法について紹介されました。つまり、データのみの情報を用いて分類を行うことができるそうです。研究事例として、twitter上でのデマ情報の検出について発表されました。twitterは、誰でも気軽に情報発信ができ、伝達スピードは既存のどのメディアよりも速いことが知られています。そして、東日本大震災では、災害時の情報伝達に非常に優れているということが明らかになりました。しかし一方で、twitter上に多くのデマが生まれ、それが混乱を引き起こすことが浮き彫りとなりました。そのため、今後より有用な情報伝達メディアとして扱うために、害のあるデマと本当に有用なニュースを見分けることが要求されます。そこで、遠藤先生はクラスタリングの研究手法を応用し、twitter上のデマ検出に取り組みました。具体的には、twitterの情報のみを使って(教師なしで)、「デマ」と「本当のニュース」を分類する手法を提案されました。その結果、なんと80%の精度で、デマと本当のニュースを分類することができるようになったそうです。遠藤先生は発表中、ステージを飛び出して会場を自由に行き来し、躍動感溢れる発表を展開されました。そのため、計算機科学という緻密な研究内容の発表にも関わらず、研究に対する情熱が存分に伝わってきました。講演後の休憩時間中も、質疑応答のコーナーでは物足りなかった学生たちが列をなして質問している姿が印象的でした。   [質疑応答コーナー] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. twitterの文章が肯定または否定的な内容を含むことと、そのtweetがデマであることはどのように対応するのか。(物理学専攻の大学院生) A. デマには危機感を煽ることを目的にしたものが多いので、否定的な内容がデマの特徴の一つとなる。そのため、デマの同定には、文章中の否定的な部分の抽出が有用となる。 Q. 実用上、不安感を煽るような否定的デマは早急に同定する必要があるだろう。逆に「私はダイエットに成功した」みたいな肯定的デマは広まってもあまり害はない。(笑)   [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。    
◆岩井宏暁先生 「イネの細胞壁をデザインする」
[プレゼン発表] _DSC6543 岩井先生は、植物生理学、植物細胞生物学を専門に研究している先生です。今回は、バイオ燃料への応用を目指した、イネの細胞壁に関する基礎研究について発表して頂きました。岩井先生は、「植物のかたちはどうやってできあがるのだろうか」という素朴な疑問から植物の細胞の研究をはじめられたそうです。植物はレンガのように積まれた細胞で作られており、その細胞をがっちりと支えているのが細胞壁です。この細胞壁が植物のかたちづくりに果たす役割を調べる一方で、逆に細胞壁を自由にデザインすることで、何かに役立つ植物を作ることができます。そこで注目されたのがバイオ燃料への応用です。地球上のエネルギー問題が深刻化してきているなかで、バイオ燃料にかかる期待は日々増すばかりです。しかし、バイオ燃料をもっと実用的なものにするには、まだまだ克服しなければならない問題点が多いそうです。その中でも、茎などの食べられない部分をより効率よく燃焼できる作物を開発することが求められています。そこで岩井先生は、バイオ燃料の源となる、細胞壁中の「セルロース」を増やす研究に着手されました。試行錯誤の結果、セルロース同士を結ぶ“ワイヤー”役である「ヘミセルロース」の発現を抑えると、セルロースの量が増加することを発見しました。さらに、今回発見したセルロースを多く含むイネは、丈夫で病気にもなりにくい性質を併せ持つことも分かったそうです。以上の性質は、バイオ燃料の効率化に向けた大きな示唆を与えるそうです。「植物のかたちはどうなっているのだろうか」、という基礎的な問題意識が、エネルギー問題に関わるバイオ燃料の研究へと結実していく展開にワクワクさせられました。「わたしも研究頑張ろう!」と思った受講生も多かったのではないでしょうか。また岩井先生は、専門外の人にとっては全く想像できない細胞壁の中の世界を、ビルの構造に例えて説明されました。そのことで、呪文のように聞こえる「セルロース」や「ヘミセルロース」も身近なものに感じることができました。やはり、専門外の人には、分かりやすい対象に例える技術が大事であると痛感しました。   [質疑応答コーナー] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. イネ全体の内、食べられない部分をバイオ燃料に活用する一方で、食べる部分に遺伝子の組み換えに伴う何らかの負の影響が出たりしないか。(システム情報工学研究科の院生) A. 本研究の特色は、ヘミセルロースの量を抑えるとセルロースが増加するという、細胞自身の機能を使うことにある。また、本研究はトウモロコシのように直近の実用化を目指したものではなく、何十年も先を見越した基礎研究に位置づけられる。なので、食べる部分とバイオ燃料を兼ねるためにイネの研究をしているという意図よりも、研究に適したモデル生物としてのイネの役割に注目している。   [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。   文責:尾澤岬    

今年もやります!院生プレゼンバトル2013

学群生のみなさん、 大学院生がどんな研究をしているか、知っていますか?   大学院生のみなさん、 学群生や一般の方に対して、あなたがどんな研究をしているか、わかりやすく伝えられますか?

院生プレゼンバトルは、大学院生による研究プレゼンテーションのNo.1を選ぶ企画です。

様々な研究科や学群・学類を有する筑波大学では、様々な分野の最先端の研究が行われています。 しかし、このような研究の成果は、普段の生活ではなかなか知ることはできません。 特に、自分の所属と遠い分野であればあるほど、どんなことを研究しているのか知る機会は少ないというのが現状です。 また、近年、科学コミュニケーションなどのことばに代表されるように、 科学者・研究者が一般の人にもわかりやすく研究内容を伝えるスキルが求められています。 これは、大学での研究に携わる大学院生にも当てはまります。 しかし、学群生や一般の方はもちろん、大学院生同士ですらもお互いの研究を伝える機会は、そんなに多くはありません。 しかも、研究プレゼンテーションを「ただ聞く」だけなら、興味のある分野の学会に行けばいいじゃない・・。 そこで私たちは、「院生プレゼンバトル」と称して、2011年度から研究プレゼンテーションスキルの向上学術交流を図る企画を運営してきました。 3回目となる今回は、 10月19日(口頭発表部門予選)と、11月3日〜4日(ポスター発表部門、口頭発表部門本戦)の日程で、 大学院生による研究発表会を行うだけでなく、来場者も審査員として参加できるイベントを開催します。 プレゼンターとして参加する大学院生は、自分自身が日頃行なっている研究についての発表を行います。 ここでは、学群生や一般の方にもわかりやすく、そして、魅力的な研究プレゼンテーションが求められます。 来場者は、大学院生の研究プレゼンテーションを見聞きするだけでなく、 その場で質問が可能な上、審査員として投票もおこないます。 そして投票の結果、特に優秀だったプレゼンターが表彰されます。
院プレティーザー

← 大学構内の各所にこんなポスターが貼られています!

制作: 田中みさよ

MMI休止のお知らせ

!!【重要なお知らせ】!! MMIは今週5月13日の回をもちまして、一旦お休みさせていただきます。ご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご容赦ください。これまで、お越しいただいてだ皆様、発表をしていただいた皆様、大変感謝いたしております。ありがとうございました。 不定期ではありますが、夕方特別版(仮称)はこれからも継続致します。日程が決まり次第、お知らせいたします。 今後ともMMIならびに他のTGNの活動へのご支援をよろしくお願いいたします。

5月13日(月)のMMIは?

5月13日のMMIの発表者が決まりました。 次回MMIは、 数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻、核融合学の横山拓郎さんによる 未来のエネルギー“人工太陽”を実現する! 〜海水から無限のエネルギーを作る研究〜」です。 いつもの通り、朝8時から中央図書館エントランスホールにて。お待ちしてます。   MMIでは発表者を募集しています。
発表者 学生(院生でも学群生でも)
内容 自身の研究発表
時間 30分程度(15分プレゼン+15分ディスカッション)
場所 筑波大学附属中央図書館 入口
対象 異分野の方(院生、教員、職員などなど)
興味のある方は問い合わせフォームからどうぞ。

教員プレゼンバトル2013 第二回講義概要

◆掛谷英紀先生 「プロパガンダを工学する」
[プレゼン発表] _DSC6070 「プロパガンダ」とは政治やマスコミ関係でよく出てくる用語です。広辞苑で調べてみると、『特定の政治的考えを押し付けるための宣伝』という意味らしいです。それを工学するって一体どういうことでしょうか。残念ながら私には全く想像が出来ませんでした。そんな予想外なタイトルに惹かれた方も多かったと思います。思えば、「新聞やテレビなどのマスメディアは思想的に中立ではなく、ある程度のバイアスがかかっている」というような言論を耳にします。実際には誰しも感じていることだと思うのですが、なかなか説明することは容易ではありません。このいわゆる、「言論のバイアス」を機械学習という工学の手法を使って定量的に評価しよう、と目論むのが掛谷先生の研究でした。機械学習とは大雑把に言えば、膨大なデータから意味のある情報を抜き出して整理する工学の手法のことです。では、この機械学習を使ってどのように思想的バイアスが暴けるのでしょうか。掛谷先生はいくつも研究事例を挙げながら説明されました。特に興味を引いたのは、新聞に書かれた文章だけから新聞社(読売、毎日、日経など)を当てるという研究です。文章に含まれる単語の出現パターンを機械学習によって整理し、どの新聞社の文章であるのか分類しながら推論するとのことです。「まさかそんなことは出来ないだろう」、と一見感じますが、予想以上に的中率の精度は高く、いかに各新聞社の言論に思想的なバイアスがかかっているか、という事実が浮き彫りになりました。その他にも、政治家の書いた文章だけから政党を分類することさえ出来てしまうそうです。また、このような研究成果を応用して「将来は選挙支援にも役立てたい」と目標を語っていただけました。発表の仕方は明快で、文系理系を問わず、全ての専攻の方が興味を持てるように非常に工夫されたプレゼン発表でした。 [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. このような研究をやっていて、外部から圧力がかかったりしないか?(生命環境の大学院生) A. 今のところは大丈夫だ。私がもっと有名になって、何か政治的なことを提言しはじめると、外部から圧力がかかってくるかもしれない(笑)。(掛谷先生) Q. 生物の進化の過程で、種というものはどんどん分化していく。そしてそれらは系統樹として書き表せるが、掛谷先生の開発した機械学習の手法で、政党の分化や、政党の系統樹的な解析はできるか。(生物系の教員) A. そのようなことは可能だ。例えば、選挙日が近づくと離党する議員がよく現れるが、彼らの文章を解析すれば、いつ離党するのか予測できるかもしれない。(掛谷先生) [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。    
◆卯城 祐司 「だから英語は面白い!」
[プレゼン発表] FPBthumbs 卯城先生は、英語教授法について研究している先生です。誰もが一度はお世話になった、有名な英語の教材の作成なんかにも携わっておられます。今回のプレゼン発表では、英語を学ぶことで楽しめる面白いトピックをたくさん紹介されました。例えば、「big」と「large」って、一見そっくりな単語ですが、ちょっとしたイメージの違いがあるそうです。bigには主観的なイメージが、そしてlargeには客観的なイメージをネイティブは感じているそうです。それゆえに、「ビッグマック」という商品名が放つ響きにはちゃんと意味があり、「ラージマック」では表現としてダメなのだそうです。今回の卯城先生のプレゼン発表で、新しく英単語を学ぶ際に意識すべき事が増えてしまったと感じるかもしれません。しかし、「実用的な英語」を駆使する上でその単語のニュアンスを把握することは重要であり、将来、海外で活躍する「グローバルな人材」になりたい方には非常に有意義な情報だったのではないでしょうか。話は変わりますが、個人的に印象に残ったのはプレゼンスタイルです。卯城先生は、聴衆に疑問を投げかける際に、30秒ほど隣の席同士で相談させる時間を設けました。私は当初、なぜわざわざ隣と相談させるのだろうか、と疑問に感じていましたが、後で腑に落ちてしまいました。プレゼン中にも関わらず会場内でガヤガヤと話させることで、場内の雰囲気のギアチェンジを引き起こしたのです。その後は、卯城先生のちょっとしたジョークにも会場が大いに反応し、プレゼンは爆笑の渦に包まれました。このことを卯城先生は意図して狙っていたのでしょうか?「だから卵城先生は面白い!」。 [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. アメリカ英語とか、イギリス英語、またはインド訛りなど、様々な英語の発音があるが、我々日本人はどういった発音をめざせばいいのか?(リスク工学専攻の大学院生) A. 本当の答えはわからない。昔は、アメリカやイギリス英語を目指したが、現在は様々な英語発音に対して、それぞれ同様に価値があると考えられている。そのことを反映して、Englishesという単語もあるくらいだ。(卯城先生) Q. 日本人の英語発音はネイティブにとって聞き取りやすいのか?(人間総合科学研究科の大学院生) A. 日本人の英語発音はフラットで聞き取りにくいらしい。ネイティブの英語には、リズムがある。日本人にとってインド人の英語はなんとなく訛っていて聞き取りにくいイメージがあるようだが、ネイティブにとっては、日本人よりもインド人の英語の方が、リズムがあって聞き取りやすいらしい。(卯城先生) [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。      
◆山本洋平先生 「分子集積材料による新しい光・電子機能発現
[プレゼン発表] 山本先生 山本先生は、超分子化学という分野の研究をしている先生です。導入部では、化学が専門ではない学生も対象にして、化学とはどういう学問なのか基本的な説明をしてくださいました。誰もが「化学」と聞いて想像する原子。その原子を並べたのがあの一見無機質に見えてしまう周期表ですが、なんと山本先生は、各元素に日本のアニメキャラが描かれたイメージ破りの周期表を紹介されました。この作戦に、思わず(多くの)受講生は度肝を抜かれました。山本先生の作戦勝ちですね。お見事です。さて、化学では様々な分子を作るうえで、原子と原子の間の結合が重要な役割を果たします。とりわけ、共有結合という非常に丈夫な結合が有名です。しかし、共有結合よりももっと弱い結合でも、多様で魅力的な物質を作り出すことができるというのです。特に、山本先生が研究している、超分子とは、分子同士がゆるやかな結合で繋がった分子の集合体のことです。超分子は、結合のゆるやかさ故に、温度に応じて勝手に分子が積みあがるという性質を持ちます。その性質を最大限に用いた「自己組織化」のアニメーション映像は圧巻でした。単に、水と油に馴染みやすい両親媒性分子を溶媒の中に入れるだけで、東京スカイツリー顔負けの見事な建造物が勝手に組みあがってしまいました。山本先生曰く、これらの超分子が見せる性質を巧みに利用し、有機エレクトロ二クスに応用するのが目標だとのことです。山本先生のあっと驚くような発想による研究成果が、私たちの身近なデバイスにも使用される日が来るでしょう。そんな日が待ち遠しいですね。 [質疑応答] 質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。 Q. エレクトロニクスというと金属のイメージが強いが、有機エレクトロニクスは何がうれしいのか?(数理物質科学研究科の大学院生) A. 有機分子は金属に比べて、軽くて柔らかいので非常に扱いやすい。さらに、金属を使わないということで資源の節約にもなる。(山本先生) Q. 新しい材料を開発すると、研究の段階では無害と判断されても、後に応用されるようになってから毒性などが見つかったりはしないか。(システム情報工学研究科の大学院生) A. 今のところない。私の研究は基礎研究に位置づけられ、応用として皆さんの生活に生かされるには、もう何ステップもの応用研究が必要だ。その間に毒性などの検証がなされるだろう。(山本先生) [種明かしディスカッション] 種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。     文責:尾澤岬