メンバー自己紹介【砂金学】

砂金学
(いさご がく)



所属:総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科
素粒子原子核専攻(理論部門)5年一貫博士課程2021年入学

専門:素粒子論(の基礎をひたすら研鑽中)

キーワード:理論物理学・素粒子・原子核・宇宙・科学・科学史・科学哲学・科学技術社会論・サイエンスコミュニケーション・哲学・ドイツ語・英語・通訳翻訳学



(今の)専門は物理学です。
みなさん紙を用意してください。半分に破ってください。小さくなりましたね。また半分に破ってください。更に小さくなりました。くりかえしてください。だんだん破るのが大変になってきます。これ、無限にくりかえしたらどうなるでしょうか?何がでてくるでしょうか?

素粒子論というのは「これ以上分解できないとされる粒子」の性質とくにそれらの相互作用を扱う学問です。いまのところ標準模型という理論があって、ひとまず完成したのかと思いきや、実験でほころびがじゃんじゃんでてきたり、まだ見つかっていない粒子がわらわらあったりします。相互作用についてもキレイに数式で書けるものだけでなく、そこもまだまだ人間がわかっていないことです。

ここでみなさん、よく「それは社会にどう役に立つのですか?」「どうお金になるのですか?」とおっしゃいます(とくにTVとか)よね。でも、それは未来の人にしかわかりません。

例1)1969年、アメリカのフェルミラボという素粒子原子核の研究所のウィルソン所長は、加速器建設に際し「この装置はどう安全保障に役立つのか?」と尋ねて議員たちに向かって、下記のように述べ、資金を獲得したそうです。
“This new knowledge has all to do with honor and country, but it has nothing to do directly with defending our country except to help make it worth defending.”
「この新しい装置は名誉と国に関するものです。我が国の安全保障に直接関与しないけれども、この国を守るに足る(守る価値のある)国にするのです。」
議員というあたりが日本でもまさにこういう質問をしてきそうですね。その後フェルミラボは加速器を完成させ、今でもホットな世界的な研究所となっています。

例2)今度は電気の概念が萌芽したあたりのファラデーの言葉です。グラッドストーン財務大臣(諸説あり)に電気の何が面白いんだ?と聞かれ、答えました。
“One day, Sir, you may tax it” 
「大臣、いつか電気にあなた税金かけるようになるかもですよ」
日本では消費税が創設されるまで電気税があったそうです。完全に当たってますよね。

例3)多くのみなさんが毎日物理学たとえば相対性理論をつかって生活しているのを意識したことがありますか?カーナビやスマホのGPSは相対性理論を使っています。複数のGPS衛星から電波を受信し、計測していますが、衛星の周回や地球の重力の影響を計算してズレを修正しています。修正しないと場合により数百m~数kmとかずれるそうです。ここでは相対性理論をあげましたが毎日使ってるのは相対性理論だけではないでしょう。 (特殊相対論:とても高速で動くと、物体での時間の進みが遅くなる。/一般相対論:強い重力をうけると、時間の進行が遅くなったり、空間が歪む)

基礎科学の最初の最初の研究というのは非常に評価が難しいです。しかしながらファラデーのように磁石と電線だけで実験ができるくらいのことはもう人間はわかっています(たぶん)。人間がわからないことを知るには、今までにない理論・装置が必要で、大きな装置には特にお金がかかります。従事する研究者の処遇だってあります。

たとえば、アメリカのLIGOチームが新しい巨大な装置を用いて重力波の観測に成功したのは2016年だったのを覚えているかたもいらっしゃるかとおもいます。アインシュタインが一般相対性理論から重力波の存在を予言したのは100年前です。アインシュタインが生きていたら何と言ったか聞きたかった、みたいなことを言っていた人がいらしたとおもいます(出典忘れ)が、100年単位でかかることもあるんです。とにかく大規模科学には特にお金がかかります。しかし成功するかはわからないし、成功したとしても「それがなんだ」と言われてしまうとちょっと悲しいですね。重力波だってさらになにか応用が効くでしょう。

科学とかそういう特に基礎の部分、人間がこれまで誰ひとりとして知らなかったことを知るようになるっていうのはパラダイムシフトだと思います。そういった「知らなかったことを、知るようになる」というのは高貴な遊びかもしれませんが、未来を変えるかもしれないすばらしいことだと思っています。

わたしも中の人ですしあまり大声で言う気はありませんが、日本の研究者の処遇というのは年々大変なものになってしまいました。科研費も取りづらくなったというのは報道などにある通りです。こういった科学と社会や経済の関係性なんかはあまり触れられてこなくて、でも大切で、なんだかもどかしいです。



ちなみにわたしの話をすると、

経歴はドイツ語専攻→原子核実験専攻→日英通訳専攻→企業勤務を経て、現在、素粒子論の研究者の卵です。

要約すると学部は文系、院は理系です。理転てやつです。

上智大学外国語学部・東京外国語大学・一橋大学・大阪大学大学院理学研究科などに通いました。

海外はドイツのTrier大学に1ヶ月留学、オーストラリアのモナシュ大学に1ヶ月、インターンでOECDのパリに3ヶ月などいかせてもらいました。

上智・外大・一橋では通訳や哲学・経済なんかも学ばせていただいて、現在でも(幸か不幸かオンラインになったので)通訳学校にたまに通っています。


今は総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科素粒子原子核専攻(理論部門)5年一貫博士課程というとてつもなく長い名前のところに所属しています。実際はつくばのKEK(高エネルギー加速器研究機構)というところにいます。

元語学徒として英独仏ラテンギリシャ語は最低限やっておきたいなと思っていますが、なかなかですねえ。

物理は主に相互作用をやるから、存在は哲学で、と思ったりして、興味はと~っても広いです。

車はAT笑・小型船舶1級&特殊小型・英検1級・独検準1級・仏検3級などは持ってます。

さいごに、わたしの想いは、とにかく全員が幸せになることなんですが(唐突)、物理学や今まで学んだことやスキルをもってみなさんといっしょにそれを実現できればいいなとおもっています。