教員プレゼンバトル2013 第七回講義概要

◆坪内孝司先生 「採石場における小割作業の自動化に向けた取り組み」

[プレゼン発表]
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坪内先生は、システム情報系の知能ロボットの研究がご専門の先生です。今回のプレゼンでは、坪内先生自身が、過去の学会の口頭発表で“実際に使用した”スライドを使って発表されました。

先生のプレゼン内容を簡潔に言うと、それはまさにタイトルの通りでした。「名は体を表す」というコンセプトのもとで、タイトルの選定には充分推敲されているそうです。

コンクリートの骨材として使われる石灰石は、建築の現場では欠かせない材料です。ですが、この石灰石を採石するには、非常に大きな手間がかかります。まずは、石灰石鉱山で爆薬を用いた発破を行い、大きなゴロゴロとした石灰石の岩に砕きます。その後、運びやすいように、この岩を小さく割る作業(小割)をします。最後に、小割して運びやすくなった石灰石を輸送し、所望の場所まで届けます。

非常に重く、ゴロゴロと不規則な動きをする石灰石の岩を、ショベルカーでコントロールし、小割する作業には、熟練した操作が必要です。また、石灰石の不規則な動きは、輸送の際にもしばしば、突発的な渋滞を引き起こします。

先生の研究は、これらの操作を知能ロボットの技術を用いて自動化しようという試みです。具体的には、ロボットに石灰石を認識させ、アームの自動制御を用いて石灰石を移動させる技術や、画像処理技術を応用し、輸送の際の渋滞箇所を検知する技術の開発を進めています。

現在、屋内での実験を繰り返し、改良を重ねている段階だそうですが、坪内先生らの開発した技術が、採石現場で活躍する日も刻々と近づいている模様です。

多くの受講生にとって、プレゼンの主な機会は、学会や研究会だと思います。なので、実際の学会での発表を元にした、坪内先生のプレゼンは、スライドづくりや、発表のリズム等、そのままお手本となるものでした。

 

[質疑応答]

質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。

Q. ヒトが作業する場合と、ロボットに自動化させる場合では、現状では効率はどれくらいか?(数理物質科学研究科の大学院生)

A. 現状では、ヒトが作業した場合の7割ほどの効率である。熟練したヒトは、岩のどこをつつけば効率よく動かせるか分かっている。ロボットはそれがまだできていない。このことは今後の課題でもある。

 

Q. 岩を転がす際のショベルが一本指なのは理由があるか?二本指の方が効率が良い気がするが。(体育科学が専門の大学院生)

A. 一本指が昔から使われているから仕方がない。今この指の部分を作っているのは一社のみ。この規格を変更することは、コスト的に非常に難しくなっている。なので、この規格を前提にして自動化の研究を進めている。

 

 

 

◆鈴木義和先生 「静電噴霧熱分解法: 装置づくりからナノ材料の合成まで」

[プレゼン発表]
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鈴木先生は、無機系エネルギー・環境材料の研究者です。

自身でおっしゃるように“こてこての大阪人”で、芸人さながら、「どうも~~」と会場入りし、聴衆を沸かせました。

鈴木先生は、自身が経験した、研究室の立ち上げ、新規研究分野への参入をストーリー形式で紹介されました。研究室の立ち上げ時や、新規研究分野へ参入する際には、往々にして予算があまりなく、最新の実験機器を買うことができません。そんなとき、「自分たちで装置を自作する」という気概が大事だと鈴木先生は言います。

さらに、苦労して装置を自作することで、ブラックボックス化しがちな装置の扱いから脱却し、市販の装置ではできないパラメータの調整が可能になる等のメリットもあるそうです。

プレゼンのキーワードである「静電噴霧」とは、微細なナノ粒子をつくる手法のひとつです。非常に細いノズルから、電圧を印加した液体を吹きつけることで、大きさの均一な微粒子をつくることができます。そして、この均一な微粒子は、ナノ材料として幅広い応用の可能性を秘めています。

今まで、教員プレゼンバトルでプレゼンされた方の中でもダントツにエンターテイメント性のあるプレゼンでした。例えば、プレゼン途中でクイズを出し、正解者に研究室オリジナルのシールを配るなど、教員プレゼンバトルでしかできないような面白ネタが満載でした。

 

[質疑応答]

質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。

Q. 単一の大きさの微粒子が作成できると、どのような点が応用としてうれしいか?(教育学専攻の大学院生)

A. 身近な例では、ディスプレイの開発に役立っている。また、球状の形状は表面積が大きいため触媒として使用する応用が考えられる。

 

Q. 私は今、音響の研究をやっていて、自作のマイクを作っている。実際はなかなか思った通りの動作をしてくれない。装置を自作する際に、何か工夫していることはあるか?(音響工学が専門の大学院生)

A. 一般に、私の研究対象である材料系は、機械系に比べて、大きく測定値が異なるということはあまりないが、導電性が桁はずれに違ってくるということがまれにある。そういうときは、一見すると関係なさそうなパラメータも再度考え直してみる、という方針でいる。

 

 

◆佐藤正美先生 「排便障害はいかにQOLを低下させるか」

[プレゼン発表]
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佐藤先生は、医学医療系の先生です。研究と同時に、臨床の現場にも携わっています。看護系の先生が、この教員プレゼンバトルで話すのは初めてでした。なので、どんな話をするのだろうか、と受講生はとても興味を持ったと思います。

そんな多くの受講生にとって、未知の世界である看護学への入り口として、佐藤先生はまず、「看護的な人間の捉え方」について紹介されました。看護に携わる人は、人間を分析的ではなく、トータルに、そして統合的に捉えているそうです。

佐藤先生が、今回発表された研究テーマは、「直腸がん前方切除術後の排便障害を評価」です。日本人の死因のトップは、がんと言われています。がんの中にも、胃がんや肺がんなど、様々な種類がありますが、「直腸がん」は、数あるがんのなかでも死因の上位に位置するものだそうです。

直腸がんの治療に、直腸の前方を切除するというものがあります。このような手術を受けた患者さんは、普段の生活に欠かせない排便に苦労することも多いそうです。例えば、私たちは、オナラか便のどちらが出そうなのかということを感覚的に分かります。なぜかというと、肛門付近に、両者を感知するサンプリングセンサーが付いているからだそうです。しかし、直腸がん前方切除術を受けた患者さんには、このセンサーは働かないため、大きな障害を伴います。

佐藤先生は、このような患者さんへのアンケートや、排便行動の定量的な評価、文献調査を駆使し、患者さんのQOLの向上を目指して日々研究しています。

人間をトータルに捉えるという看護の性格から、プレゼンには、悲しい局面や幸せな局面など、人間の感情的な内容が多く含まれていました。佐藤先生は、これらの喜怒哀楽を、発話の強弱や、トーンでみごとに表現していました。そして何より、患者さんへの愛が存分に伝わってくる発表でした。

 

[質疑応答]

質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。

Q. 海外によってトイレ事情が大きく異なる。海外に行くと、つくづく日本はトイレ事情に恵まれていると思う。すると、国によって排便障害への捉え方が変わってくるのではないか。(数理物質系の教員)

A.確かに、日本はトイレ事情に恵まれている。しかし、過去の海外の文献等を調査する限りでは、国による排便障害への捉え方に大きな変化はなく、みんな同じ悩みを抱えているようである。

 

 

 

(文責:尾澤岬)