教員プレゼンバトル2013 第二回講義概要

◆掛谷英紀先生 「プロパガンダを工学する」

[プレゼン発表]
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「プロパガンダ」とは政治やマスコミ関係でよく出てくる用語です。広辞苑で調べてみると、『特定の政治的考えを押し付けるための宣伝』という意味らしいです。それを工学するって一体どういうことでしょうか。残念ながら私には全く想像が出来ませんでした。そんな予想外なタイトルに惹かれた方も多かったと思います。思えば、「新聞やテレビなどのマスメディアは思想的に中立ではなく、ある程度のバイアスがかかっている」というような言論を耳にします。実際には誰しも感じていることだと思うのですが、なかなか説明することは容易ではありません。このいわゆる、「言論のバイアス」を機械学習という工学の手法を使って定量的に評価しよう、と目論むのが掛谷先生の研究でした。機械学習とは大雑把に言えば、膨大なデータから意味のある情報を抜き出して整理する工学の手法のことです。では、この機械学習を使ってどのように思想的バイアスが暴けるのでしょうか。掛谷先生はいくつも研究事例を挙げながら説明されました。特に興味を引いたのは、新聞に書かれた文章だけから新聞社(読売、毎日、日経など)を当てるという研究です。文章に含まれる単語の出現パターンを機械学習によって整理し、どの新聞社の文章であるのか分類しながら推論するとのことです。「まさかそんなことは出来ないだろう」、と一見感じますが、予想以上に的中率の精度は高く、いかに各新聞社の言論に思想的なバイアスがかかっているか、という事実が浮き彫りになりました。その他にも、政治家の書いた文章だけから政党を分類することさえ出来てしまうそうです。また、このような研究成果を応用して「将来は選挙支援にも役立てたい」と目標を語っていただけました。発表の仕方は明快で、文系理系を問わず、全ての専攻の方が興味を持てるように非常に工夫されたプレゼン発表でした。

[質疑応答]

質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。

Q. このような研究をやっていて、外部から圧力がかかったりしないか?(生命環境の大学院生)

A. 今のところは大丈夫だ。私がもっと有名になって、何か政治的なことを提言しはじめると、外部から圧力がかかってくるかもしれない(笑)。(掛谷先生)

Q. 生物の進化の過程で、種というものはどんどん分化していく。そしてそれらは系統樹として書き表せるが、掛谷先生の開発した機械学習の手法で、政党の分化や、政党の系統樹的な解析はできるか。(生物系の教員)

A. そのようなことは可能だ。例えば、選挙日が近づくと離党する議員がよく現れるが、彼らの文章を解析すれば、いつ離党するのか予測できるかもしれない。(掛谷先生)

[種明かしディスカッション]

種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。

 

 

◆卯城 祐司 「だから英語は面白い!」

[プレゼン発表]

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卯城先生は、英語教授法について研究している先生です。誰もが一度はお世話になった、有名な英語の教材の作成なんかにも携わっておられます。今回のプレゼン発表では、英語を学ぶことで楽しめる面白いトピックをたくさん紹介されました。例えば、「big」と「large」って、一見そっくりな単語ですが、ちょっとしたイメージの違いがあるそうです。bigには主観的なイメージが、そしてlargeには客観的なイメージをネイティブは感じているそうです。それゆえに、「ビッグマック」という商品名が放つ響きにはちゃんと意味があり、「ラージマック」では表現としてダメなのだそうです。今回の卯城先生のプレゼン発表で、新しく英単語を学ぶ際に意識すべき事が増えてしまったと感じるかもしれません。しかし、「実用的な英語」を駆使する上でその単語のニュアンスを把握することは重要であり、将来、海外で活躍する「グローバルな人材」になりたい方には非常に有意義な情報だったのではないでしょうか。話は変わりますが、個人的に印象に残ったのはプレゼンスタイルです。卯城先生は、聴衆に疑問を投げかける際に、30秒ほど隣の席同士で相談させる時間を設けました。私は当初、なぜわざわざ隣と相談させるのだろうか、と疑問に感じていましたが、後で腑に落ちてしまいました。プレゼン中にも関わらず会場内でガヤガヤと話させることで、場内の雰囲気のギアチェンジを引き起こしたのです。その後は、卯城先生のちょっとしたジョークにも会場が大いに反応し、プレゼンは爆笑の渦に包まれました。このことを卯城先生は意図して狙っていたのでしょうか?「だから卵城先生は面白い!」。

[質疑応答]

質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。

Q. アメリカ英語とか、イギリス英語、またはインド訛りなど、様々な英語の発音があるが、我々日本人はどういった発音をめざせばいいのか?(リスク工学専攻の大学院生)

A. 本当の答えはわからない。昔は、アメリカやイギリス英語を目指したが、現在は様々な英語発音に対して、それぞれ同様に価値があると考えられている。そのことを反映して、Englishesという単語もあるくらいだ。(卯城先生)

Q. 日本人の英語発音はネイティブにとって聞き取りやすいのか?(人間総合科学研究科の大学院生)

A. 日本人の英語発音はフラットで聞き取りにくいらしい。ネイティブの英語には、リズムがある。日本人にとってインド人の英語はなんとなく訛っていて聞き取りにくいイメージがあるようだが、ネイティブにとっては、日本人よりもインド人の英語の方が、リズムがあって聞き取りやすいらしい。(卯城先生)

[種明かしディスカッション]

種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。

 

 

 

◆山本洋平先生 「分子集積材料による新しい光・電子機能発現

[プレゼン発表]
山本先生

山本先生は、超分子化学という分野の研究をしている先生です。導入部では、化学が専門ではない学生も対象にして、化学とはどういう学問なのか基本的な説明をしてくださいました。誰もが「化学」と聞いて想像する原子。その原子を並べたのがあの一見無機質に見えてしまう周期表ですが、なんと山本先生は、各元素に日本のアニメキャラが描かれたイメージ破りの周期表を紹介されました。この作戦に、思わず(多くの)受講生は度肝を抜かれました。山本先生の作戦勝ちですね。お見事です。さて、化学では様々な分子を作るうえで、原子と原子の間の結合が重要な役割を果たします。とりわけ、共有結合という非常に丈夫な結合が有名です。しかし、共有結合よりももっと弱い結合でも、多様で魅力的な物質を作り出すことができるというのです。特に、山本先生が研究している、超分子とは、分子同士がゆるやかな結合で繋がった分子の集合体のことです。超分子は、結合のゆるやかさ故に、温度に応じて勝手に分子が積みあがるという性質を持ちます。その性質を最大限に用いた「自己組織化」のアニメーション映像は圧巻でした。単に、水と油に馴染みやすい両親媒性分子を溶媒の中に入れるだけで、東京スカイツリー顔負けの見事な建造物が勝手に組みあがってしまいました。山本先生曰く、これらの超分子が見せる性質を巧みに利用し、有機エレクトロ二クスに応用するのが目標だとのことです。山本先生のあっと驚くような発想による研究成果が、私たちの身近なデバイスにも使用される日が来るでしょう。そんな日が待ち遠しいですね。

[質疑応答]

質疑応答では、異分野間のコミュニケーションらしい議論が繰り広げられました。特に白熱したやりとりを紹介します。

Q. エレクトロニクスというと金属のイメージが強いが、有機エレクトロニクスは何がうれしいのか?(数理物質科学研究科の大学院生)

A. 有機分子は金属に比べて、軽くて柔らかいので非常に扱いやすい。さらに、金属を使わないということで資源の節約にもなる。(山本先生)

Q. 新しい材料を開発すると、研究の段階では無害と判断されても、後に応用されるようになってから毒性などが見つかったりはしないか。(システム情報工学研究科の大学院生)

A. 今のところない。私の研究は基礎研究に位置づけられ、応用として皆さんの生活に生かされるには、もう何ステップもの応用研究が必要だ。その間に毒性などの検証がなされるだろう。(山本先生)

[種明かしディスカッション]

種明かしディスカッションのコーナーでは、プレゼン発表の極意や、気を付けていることなどを教えてもらったり、根掘り葉掘り質問攻めにするコーナーです。毎回、目からうろこの情報ばかりですが、これは実際会場に来て聴講した人の特権ということで、ここでは公表しません。

 

 

文責:尾澤岬